天神の系譜の奇妙なオムニバス
「去らばだ、異国の侍」

東郷が、槍を振り下ろす!

だが、その槍は畳を叩いた。

リュートがいない。

直後、背後に気配を感じて振り向く東郷。

…違う。

残影は見えたものの、リュートではない。

また気配。

目で追うも、見えるのは影のみ。

陽炎の様に揺らめく影が、東郷を嘲笑うように映っては消えていく。

「やはり妖術か」

憎々しげに呟く東郷。

グリフィノー拳闘術・闇の型。

ミルトゥワに里帰りした際に、ティグルに見せたあの型だ。

しかし、あの時は只の影だった。

陽炎のような揺らめきは見せなかった。

…今の影は、高い『熱』を帯びていた。

視覚だけでなく、気配だけでも相手にリュート本人と誤認させてしまうような。

いわば『黒い炎』。

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