天神の系譜の奇妙なオムニバス
腹が減っては戦は出来ぬ
「ね、そうだよね?」

お龍は窓から吸血鬼に向かって言う。

「……」

睨む吸血鬼。

この天神寺子屋は、生まれ素性など問わない。

どんな種族でも、どんな身分でも、分け隔てなく接するようにと教えている。

だが、あの吸血鬼は別だ。

澱み、濁った眼。

あれは本能に従って多くの人間の血を吸い、あまつさえ生前にも数多くの命の上に立っていた『支配者』の眼だ。

逆らう者には慈悲なき決断を下す独裁者の眼だ。

北斎は、お龍に言い聞かせようとする。

分け隔てなく接するのは善い事だ、美徳だ。

しかしその美徳さえ通じぬ者が、残念ながらこの世の中にはいるのだと。

< 591 / 770 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop