天神の系譜の奇妙なオムニバス
「北斎先生いつも言ってるよね、困っている人には無償で助けの手を差し伸べてあげなさい、無償でいい、見返りなど要らないと思った行いにこそ、最も価値ある恩返しは来るものだよって」

お龍は振り向いた。

「だから私、血を分けてあげ…」

「よく喋る女だ」

不意に。

吸血鬼は窓越しに、お龍の目の前に立った。

どうやってこの距離を詰めたのか。

お龍にも、少しばかり武の心得がある北斎にも見えなかった。

吸血鬼は。

「ファッ!?」

喋っている途中のお龍の舌を摘まむ。

人間にはとてもできない芸当だ。

「これか?よく回る舌は。引っこ抜いてやろうか?」

「おい、吸血鬼!やめ…」

思わず北斎が腰のものに手をかけた瞬間。

「っ……!」

北斎の、お龍の、子供達の見ている前で、吸血鬼は白目を剥いて倒れた。

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