天神の系譜の奇妙なオムニバス
「ねぇねぇ、アンタ名前何てーの?」

畳にうつ伏せになり、両手で頬杖をついてお龍が言う。

「私は丹下 龍ってんだよ、皆はお龍って呼んでるけどね。アンタは?」

真の名を語る事は、魔術的攻撃…呪いなどに利用される為、見ず知らずの者に教えるべきではない。

が、この小娘や、そこの青二才の手習師匠に、自分を呪殺する事など出来はしないだろう。

「ヴラドだ。ヴラド・ツェペリ」

「ぶらど?」

「ブではない。ヴラド。発音が違う」

「ブラド、ビュラド、ブュラド…ブ…ビュ…ブュ…発音が難しいな…」

眉をハの字にして、唇を尖らせるお龍。

全く、物怖じしない女だ。

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