天神の系譜の奇妙なオムニバス
太股出してるお龍が変わり者なのか、粋人なヴラドが変わり者なのか。

そんな不毛は争いをしていたら。

「ん…」

子供達に読み書きを教えていた北斎が、顔を上げる。

「桜達が囁いているでござる…天神の地に、また誰か来たようでござるな」

この天神の地に咲いている桜の木は、只の樹木ではない。

太古の神が、己が代わりにこの地を守護する為に遣わした化身。

故に意思を持ち、清浄を保ち、穢れを祓い、真に邪悪な者、悪意を持つ者を立ち寄らせず、また力を削ぐ働きをする。

「じゃあヴラドは、本当は悪い奴じゃないんだね」

「お前の目は節穴か、お龍。邪悪な真祖に決まっていよう」

いまだ不毛な言い争いをしている彼らの前に。

「……」

その青年は現れた。

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