天神の系譜の奇妙なオムニバス

出で立ちだけを言うなら、その青年も変わり者だった。

整っていない黒髪、身に付けている薄汚れた道着は、合気道で着用するようなもの。

荷物は持たず、身一つでここまで来た感じだ。

無精髭も生え、一見すると浮浪者。

寺子屋の子供達が、少し恐れたように部屋の奥へと引っ込む。

「もし、そこの御仁」

北斎が青年に声をかけた。

「この天神寺子屋に何か用向きでいらっしゃったでござるか？」

「……」

少しばかり、視線を走らせる青年。

「そうか…ここは寺子屋であったか…すまぬ。知らず迷い込んでしまったようだ…子供達を恐れさせてしまった」

居住まいを正し、青年は一礼した。