天神の系譜の奇妙なオムニバス
大方、兄との継承者争いに敗れ、一子相伝であるが故に己の価値を失ってしまい、放浪していたといった所か。

「初は不思議な猫でござる…心に傷を負った者、夢破れた者、行き場を失った者…そういった者達を導き、天神の地に引き寄せてくるでござる」

闇夜に告げる北斎。

北斎も、闇夜も、もしかしたらヴラドも、初の導きによってこの場に集ったのか。

「……」

お龍の所に駆け寄り、愛らしくじゃれ付く初を、闇夜は無言で見守る。

と。

「負け犬か」

ヴラドが木の上から言うのを、闇夜は聞き逃さなかった。

「継承者争いに負け、逃げ出してきた負け犬なのだろう?」

「……」

闇夜の眼光が鋭くなる。

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