天神の系譜の奇妙なオムニバス
その名をヴラドが知ったのは、まだ日本に渡ってくる前。

彼が霧の都ロンドンにいた時だった。

日本は幕末・鳥羽伏見の戦いの真っ只中。

その激しい戦いは、遠く海を越えたロンドンにまで伝わっていた。

その戦の中で、尋常ならざる強さを誇る長州藩の侍が、数十もの幕府方を斬って鬼神の如き活躍を見せたという。

霧の都の新聞は、彼を『Jakusai the Ripper(切り裂き雀斎)』と称し、センセーショナルに報道した。

まさかその数年後に、今度はロンドンに酷似した名の『Jack the Ripper(切り裂きジャック)』が現れるとは夢にも思わなかっただろうが。

< 616 / 770 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop