天神の系譜の奇妙なオムニバス
手心まで加えられては、完敗だ。

二刀使いは上体を起こし、その場に胡坐をかく。

「…リュート・グリフィノー、見事だ。流石は姫様の見込んだ男」

「姫様?…古奈美の事か?」

リュートの言葉に、二刀使いは頷く。

「俺は戊辰大戦時、王城・穢土城で姫様の護衛を務めていた者だ。常に頭巾を被っていた為に、姫様は俺の顔など御存知ないだろうが」

愛刀を鞘に納めながら、話す二刀使い。

「俺は姫様が幼い頃より彼女をお守りし、そして…身分違いながらお慕い申し上げていた」

「……」

「リュート・グリフィノー」

二刀使いは、真っ直ぐにリュートを見る。

「お前は姫様の許婚と聞いた。お前は、姫様が愛しいか?心より姫様をお慕いしているか?心底姫様を、愛しているのか?」

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