天神の系譜の奇妙なオムニバス
「いや…寧ろ毒のせいで、肋骨の痛みが忘れられる…」

沖田は何とか立ち上がった。

息は荒い。

「こんな見事な居合を放つ隠密なんて、動乱期のヒノモトにもいなかった…平穏な天神地区で、よくぞここまでの腕を…」

言いながらも、沖田は大典太をその身に引き付けるように構える。

縮こまったバネが、反動で放たれる瞬間を待っている。

彼は飢虎(きこ)だ。

或いは餓狼か。

手負いになって尚、その剣呑な気配は衰える事はない。

「絶刀…沖田殿の奥義とお聞きしました」

佐助もまた、毒狼を再び抜き放つ。

逆手に握った刀を後ろに引き、腰を落として構える。

彼もまた餓狼。

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