天神の系譜の奇妙なオムニバス
「あるとも」

即答だった。

ダンドリッジの体から、赤黒い魔力が立ち昇る。

彼の背後に浮かび上がる、複雑な紋様の魔法陣。

その紋様が、術式の複雑さそのものをも表していた。

ここまでの大規模魔法陣を、この段階で発動させるのか。

ポーカーで言えば、相手と同額のチップを賭ける『コール』といった所。

ヴィゾーヴニル・キルドと同等の魔力を、あの魔法陣から感じる。

「これで終わるものかよ。上乗せ(レイズ)だ!」

ダンドリッジは、更に魔力を流して魔法陣を回す!

召喚されたのは、大砲。

触手が、大蛇が、百足が、蚯蚓が、龍が、複雑に無数に醜悪に絡み合って、砲身を形どった大口径砲だった。

召喚だけで、ダンドリッジの残る全魔力を注ぎ込んでいる。

「祖父殿との戦いでも使わなかった技だ。そうだな…人間達が第二次大戦で開発した強力な迫撃砲に因んで、『リトル・デーヴィッド』とでも名付けるか」

「…何がリトルだよ…」

表情を強張らせるティグル。

双方、カードは切った。

あとはオープンするのみ。

「では…」

ダンドリッジが二挺拳銃の銃口をティグルに向ける。

ティグルがレーヴァテインを握り締める。

「「勝負っっっっっ!」」

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