天神の系譜の奇妙なオムニバス
「「あ」」

ヒノモトの鍛冶屋。

沖田と佐助は店の前でバッタリ出くわす。

「どうしました沖田殿。こんな所で」

「佐助君こそ、毒狼の修繕かい?」

大会での2人の一騎打ち。

人間業を超越した居合の打ち合いで、2人の愛刀は少なからず傷んでいた。

刃毀れというには微細すぎて肉眼では確認できないが、それでも達人域での戦いでは大きな不利となる事もある。

「大典太も毒狼も、頑張ってくれましたからね」

納刀したままの大典太の柄尻を、優しく触れる沖田。

その指先は、ややぎこちない。

毒狼で斬られた際の毒が、まだ残っているのか。

「本当に麻痺性の毒ですか?遅効性の猛毒なんて事は…」

「……」

視線を逸らす佐助。

いやいや、そこで目を逸らすとか!

「大丈夫ですよ」

佐助は笑った。

「毒といっても、限りなく只の麻酔に近い。寧ろ傷の痛みを和らげるようなものですよ」

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