天神の系譜の奇妙なオムニバス

話は少し前に遡る。

「うーん…」

昼休み、中庭。

ベンチに座って古奈美が見守る中、リュートはギュッと拳を握り締める。

「グリフィノー拳闘術・炎の型！」

握り拳を突き出してみるものの、ただの正拳突き。

拳は炎に包まれなかった。

「やっぱ駄目だなー、精霊召喚できねぇわ」

困ったように呟くリュート。

「精霊乖離症のせいですかね…」

古奈美もシュンと俯く。

こうやって稽古の合間、リュートは時々精霊術を試みているのだが、やはり森の精霊フォレイスの女王の言葉通り、どの精霊も応じてくれる事はなかった。

別に精霊達に嫌われている訳ではないというのが分かっているだけ気は休まるが、それでも精霊術が使えない事に変わりはない。

「もう一生使えねぇのかなぁ」

もう一度。

リュートは困ったように呟く。