天神の系譜の奇妙なオムニバス
「その音露 凛も知らねぇけど、お前も知らねぇなぁ」

笑いながら、少年の頭をクシャクシャとやるリュート。

わぷ、などと声を上げながら。

「自己紹介が遅れました」

髪を整えつつ、少年は言う。

「天神学園魔術クラスの、丹下 龍架(たんげ ルカ)と申します」

「丹下!」

その名前を聞き、リュートが驚いたように声を上げた。

…丹下の名は、天神学園に通う者なら一度は聞いた事がある筈だ。

時には学園内のありとあらゆる問題の元凶であり、時には巻き起こる騒動全ての中心人物であり、時には女子供にまで負けるフルボッコでありながら、学園或いは天神地区そのものをも救う英雄だった者達の姓。

天神学園が輩出した多くの丹下の血筋達は、全て伝説や逸話として残っている。

とにかく顔の広い人物が多かった丹下の血筋。

様々な種族人種と交友を広げ、いまや世界を問わずその子孫は生まれている。

そんな中には、普通の人間生活ではまず出会う事のない、『魔人』とまで称される魔術師を伴侶として迎えた者もいたようだ。

大抵はオツムの出来の良くなかった丹下の血筋だが、この『魔人』の血は、どうやら頭脳の面においては丹下の血を上回ったようだ。

そうして生まれてきたのがルカ。

『魔人』の家系に代々受け継がれてきた高い魔力と知識を持ち、それ故に幼くして魔術の名門『魔道協会』の魔術学院に通っていた。

「でも派閥争いとか面倒で、自主退学して天神学園に新設された魔術クラスに来たんですけどね」

そう言ってルカは笑った。

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