天神の系譜の奇妙なオムニバス
雪村に言われ、ベルの表情が曇った。

「それはっ…前にも言ったじゃないですか、確かにダンは私の家の同居人だし、ダンが学園長と仲が悪いのも事実だけど、私達は学園長や生徒会に刃向かうようなつもりはないって…」

「しかし貴女がダンドリッジ・タチバナのマスターであり、ダンドリッジ・タチバナが学園長と反目し合っているのも事実。そういう事実がある以上、貴女も迂闊に近付かせる訳にはいかない」

「そんな…っ」

雪村に言われ、ベルの瞳に涙が浮かぶ。

と。

「ウチのマスターを泣かせたな?」

校舎の壁を擦り抜けるように。

インバネスコートの長身の男が姿を現した。

「が、学園長?」

見紛うリュート。

しかしこの男は、白髪ではない。

漂わせる幽気と威圧感は瓜二つだが。

「権力を嵩に言いたい放題か。だが、マスターを涙させた以上は生きて帰れると思うなよ。ぶち殺すぞ小僧」

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