【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
■相馬side□




沙耶の提案に賛成し、見送ったあと。


「……なんか、変なことを考えてる」


俺は、甲斐と共に社長室に戻り、机の上に溜まった書類を裁いていた。


「……沙耶は、やっぱり、変わらないね」


沙耶と触れて、感じた感想。


俺の呟きに反応した、甲斐が続ける。


「何か、儚い。今すぐにでも、消えてしまいそうな……でも、夕蘭とは違う。そんな女を、沙耶を、愛してしまったのか?相馬」


仕事中は恐ろしいぐらいの笑顔と敬語のこいつは、幼馴染みに戻った途端、これである。


でも、鬼畜な部分は変わらない。


「……ああ、好きになっちまった」


母さんのことがあってから、俺は一生、人を愛さないと決めていた。


なのに、愛してしまったんだ。どうしようもなく。


珍しく、素直に気持ちを吐露した俺に驚きながらも、甲斐の手が止まることはなく。


「どうしたの?難攻不落?」


「そりゃあ、もう……」


他の女の図太さを少しもっていた方がいいのではと言いたくなるくらいに、沙耶は無欲。そして、無執着だ。


「そこが、美点でもあり、欠点なんだよな……」


無欲だったことで、彼女は何度、苦しい思いをしただろうか。

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