【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「おじいさん」
「ん?なにかね?」
「この町で……いいえ、京都で有名な話とかってありますか?教科書に載っているようなやつじゃなくて……」
もしかしたら、焔棠の初代である、異世界のお姫様について語られるものがあるかもしれないと思い、訊ねた。
おじいさんは暫く考えると、顔をあげる。
「……もしかして、“桜の契り”のことかい?」
「“桜の契り”?」
初めて聞く、話である。
「ああ……誰も、その存在を確認したことはないから、夢物語と言われることが多いんや」
「存在を確認したことがないって……なんでですか?」
「この街……焔棠は知っとるな?」
「はい」
知ってるもなにも、友人にいますし。
おじいさんは器用な手先で、花髪飾りを並べながら、話してくれる。
「焔棠、御園、姫宮、千羽……有名な家は大抵、この地から、始まる。簡単に話せば、こんな話や」
おじいさんは、折り畳み式の椅子を取り出すと、組み立て、私に座らせてくれる。
それにお礼を言って、私はおじいさんの話に耳を傾けた。