【完】☆真実の“愛”―君だけを―2

夏祭り

■甲斐side□




遠くで響く、花火の音。


「お疲れ様、甲斐」


微笑んでくれる、儚い妻。


「遅くなって、ごめん。具合は?」


「ふふふ、今日は、絶好調なの。ほら、今日は、年に一度の大きな夏祭りじゃない?せめて、花火の音くらいは聞きたくて」


長い髪を耳にかけ、窓の外を見つめるのは、生まれつき身体が弱く、満足に生活ができない、甲斐にとって、かけがえのない大切な人。



相沢紗夜華。


前世では、命に従って、泣く泣く別れた相手。


「紗夜華、これなんだ?」


相馬が用意してくれた、手持ち花火。


それを見せると、紗夜華は笑顔になった。


「久しぶりに見た!」


齢、18の遊び盛り。


生まれたときから、入退院を繰り返す。


学校には勿論、行っておらず、今日も特別室で、孤独に一日を過ごした。


「ご両親は?」


俺の言葉に、紗夜華の表情が曇る。


「やっぱり、まだ……ね?」


紗夜華の身体のせいで、会社をやめた紗夜華の母親は、根っからの仕事人間であり、それゆえか、紗夜華のことを忌み嫌っている。


「……そうだよな」


紗夜華の頭を撫でてやると、彼女は身を任せてくる。


入院費などをすべて払っている、表向きの家族。


そんな家族の足手まといになっている自分はいらない存在と、彼女は自身を責める。


まるで、沙耶のように。


名前もだが、本当に彼女と紗夜華はよく似てる。

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