【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……ま?相馬!」
名を呼ばれて、気づく。
伏せていた顔を上げれば、沙耶の能天気にも見える顔が視界に広がった。
「考えことしてたの?ごめん、置いていって。あ、食べる?」
イカ焼きを買いにいったはずの沙耶の手には、何故か、綿菓子があった。
「イカ焼きは?」
「食べたよ~美味しかった~」
「……早くね?」
「え?……もしかして、食べたかった?」
「いや、別に。ちゃんと持っとけよ」
そもそも、イカ焼きとはなんだ。
食べたことがない。
屋台というものを経験したことがない俺は、沙耶の持つ綿菓子にかぶりつく。
「自分で、持てばいいのに」
すると、文句を言われた。
「……って、甘っ」
まるで、砂糖の塊である。
「何言ってんの。当たり前でしょ?綿菓子だもん」
初めて食ったもんは、中々の衝撃で。
そんな俺をどこ吹く風な沙耶は、美味しそうに綿菓子を頬張る。
本当、何でも美味しそうに食べる沙耶には、作り手も料理の作りがいがあるだろう。
普段、あまり食べないぶん、なんだか、そんな沙耶が微笑ましかった。