【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「見てみて~」


楽しそうな、顔。


自分が彼女を望むことで、彼女の笑顔が壊れてしまうかもしれないと、分かっている。


例え、前世がなんだったとしても。


それはとうの昔に終わった、“過去”である。


それに、俺や沙耶が縛られる理由なんてない。


「あ!ねぇ、相馬、見て!」


手を握りしめられ、彼女を見下ろす。


沙耶は、まっすぐを見つめていて。


彼女と同じ方向に目をやれば、仲良く、屋台を廻っている千歳と柚香が目に入った。


「あれって、そういうことだよね?」


ニシシッ、と、悪戯っ子のような笑みを浮かべる沙耶。


今日はもう、ずっと、沙耶の笑顔しか見ていない気がする。


「……どうだろうな」


他の幼馴染みにはできるのに、どうして、俺にはできないのか。


ただ、現世で好きになった人を、想うだけなのに。


それが、大罪の気がしてならないんだ。


「……相馬?さっきから、ボーッとして……どうした?具合、悪い?」


なにも変わらない、はずだ。


なのに、どうして、お前は俺を止めるんだ?


(なぁ、草志……)


身体の中で、叫んでいる。


自分でも、自覚していることを。


「沙耶、おいで」


「んー?」


名前を呼んで、手を広げただけで、躊躇いもなく、俺の腕に飛び込んできた彼女。


本当に両想いだったら、良かったのに。


「どうしたの?」


すかさず、腰に手を回し、自分の方に抱き寄せ、密着したせいで顔をあげた、沙耶の頬に反対の手を添え、唇を奪った。

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