【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「花火は、来年でも、再来年でも見られるよ。けど、相馬が体を壊したら、すぐには治らないじゃん。人間の体は、そんなに都合の良いものじゃないんだから」


この、笑顔を護りたかったんだ。


昔から、ずっと……


「あんたは、本当に人のことを言えないからね?無理しすぎだし。大体……って、違う、違う。聞きたいことがあったんだ。説教なんかじゃない」


ぶつぶつと自分に言い聞かせると、沙耶は訊ねてきた。

「何か欲しいものある?」と。


欲しいもの。


そう聞かれ、すぐに出てこない自分が悲しい。


「いや、特には……」


幼い頃から、何でも与えられてきた。


けど、そう言って、すぐに後悔した。


「いや、やっぱ、ある」


すぐさま否定すると、彼女は噴き出した。


「……ふふっ、どっち?」


首をかしげる沙耶を抱き寄せ、見下ろす。


力強く、抱き締めて。


放さないというように。


このまま、生きていけたら。


(俺は、何が欲しいのか……)


分からない。

何がほしいのか。

けれど。


何故か、身体の奥底から、渇望するものがあって。


それが、沙耶関係であることは、間違いなかったのに。


「――……そばにいてくれ」


抱きしめたまま、耳元で囁く。


何故か、真っ直ぐに、その言葉が出てしまった。


(――自分は、沙耶を欲しがっている)


こんなにも、狂おしく胸を焼くのは、その想い。


そんなことは、とうの昔にわかっているんだ。


沙耶の笑顔も、身体も手に入れた俺は、他に沙耶関係で何が欲しいと言うのだろう。


何が欲しいと、叫んでいるのだろうか。


「―…いるよ?」


彼女への、罪悪感。


救いたいのは、嘘ではない。


けど、このままでは、それだけですまない。


(……わかっているんだ)


頭でわかっていても、心が、身体が従ってくれない。


その場合は、どうすれば良いのだろうか。


そっと頬を包まれて、笑いかけられる。

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