【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「大丈夫、相馬は弱くないよ」
彼女の肩に顔を埋めると、沙耶は俺の頭を撫でた。
「相馬は弱くなんかない。とっても、優しくて、強いよ」
何の偽りもない、真っ直ぐな言葉。
こんなところに、惹かれたんだろうか。
気がつけば、惚れていた。
飾ることのない、言葉が、俺を救うんだ。
「何度も、私に優しくしてくれた。それは、強くならないとできないことだもの」
強くなりたい。
錯乱する沙耶が、毎回、言う言葉。
「誰かを守るためには、誰かに優しくするためには、強くならなければならない。それができる人が、本当に優しい人。相馬は、自分に何があったって、それらをすべて殺して、私を救ってくれるでしょう?」
生きたいと願ってくれた、愛する人を救う。
一見、当たり前のことなのに。
彼女は、自分に甘えを許さない。
「似ている人を、私は知っていたの」
ぎゅうっ、と、沙耶は俺の背に手を這わせ、服を握った。
縋りつくように、抱きついてくる彼女は、泣きそうな声音で言った。
「ごめんね……その人を、私は殺したの。だから、あんたにも、甘えちゃいけないって、分かってる。でも、私には、力がないから……ごめんね」
自分の存在は、人に害を及ぼす。
彼女に理性が働いてくれて、助かった。
自分を責めた状況なら、間違いなく、“壊れてた”台詞だったから。
「……俺が、護りたいんだよ」
それだけだ。
生きていて欲しいから、だから、俺は力を貸す。
ただ、それだけ。
「ごめん、ごめんね……」
すべてを捧げて、俺を利用するという話のはずだった。
なのに、彼女はそれを苦しいと言う。
(ああ、どうして、こいつは……)
止めなければ、ならない想い。
溢れて止まらない。
「沙耶……」
「……なぁに?」
名前を呼べば、彼女は顔をあげた。
触れ合う熱だけが、俺達の救い。
静かな、この闇の中で、それだけが救い。