【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
(……愛してる)
その、たった一言を口にできたなら。
どうしようもない、願いが胸を焼く。
「……帰るぞ」
沙耶はうなずき、俺から離れる。
何故か、その行為すら嫌で。
彼女を、そばに引き寄せた。
「……っ」
見えた彼女の瞳は、不安で揺れていて。
過去を思い出したせいで、傷ついているのは見てとれた。
(ごめんな……こんなやり方しか知らない)
愛してる人にはどうすればいいのか、分からない。
甘えるしかない。
この時でさえも。
手を伸ばし、抱き締められるなら。
大丈夫だと、すべてを引き受けてやる力が、俺にあるのなら。
すべてを投げ出して、今すぐに、沙耶をこの手にただ、抱き寄せたいと願う声も。
俺はまた、無視するんだ。
泥沼に嵌まるように、溺れていくような感覚に囚われて、俺は、夜道を沙耶と歩いて、帰った。