【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「んな、私情で、権力は使わねぇよ。どっかのボンクラと一緒にすんな」


「ボンクラ……って、私に言い寄ってきた人達?」


先日、相馬関係で、私に言い寄って来た人達がいた。


美辞麗句を並べ、家自慢をしてくる人間をクズと思ったのは確かだが、まさか、相馬の口から、こんな言葉が出るとは。


「……それに、お前は嫌いだろ?そういう奴」


「ん?」


(……こいつ、もしかして、私のことを気遣った?)


「うん、嫌い」


権力を誇示する人間は、大嫌いだ。


誰かにとても、似ているから。


誰か。


それで、祖父が思い浮かんだ私は、最低なのか。


「だからだよ。お前に嫌われたくはな……」


「え?」


「……なんでもない」


(何を言おうとしていたんだ……?)


言いかけて、口を自身の手で塞いだ相馬。


嫌われたくない?


そんなのは、勿論、私もだ。


「……相馬のことは、嫌いにならないよ。そういう人じゃないの、もう、知ってるもの」


優しい人間だと、知っている。


そんな彼を、嫌うわけがないではないか。


「好きよ。ちゃーんと、ね?」


にっこり、微笑んだ。


ちゃんと、伝わるように。


すると、相馬は……


「……そう、かよ」


と、呟く。


そして、耐えられないと言いたげに、


「お前、本当に、何て言うか……」


と、言った。


「ん?……なに?」


「……なんでもない」


かわいい、と、思う。


失言したと、慌てる彼が。

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