【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……よ、食べてるか」
人と笑い合えなかった私を、憧れていた世界に連れて行ってくれたのは、相馬だ。
相馬が横に腰を下ろすを見ながら、私は笑顔でうなずいた。
笑顔に見えるように、頑張った。
「うん!美味しいよ~」
誰でも、騙されてくれた笑顔だった。
でも、この笑顔には……
「……何か、あったか?」
彼は、騙されてくれない。
「なんで?」
「笑顔が、嘘っぽいから」
「……それだけ?」
「それ以外に、何があるっていうんだ?」
騙されていてくれればいいのに。
本当、当主の器なんだと、改めて思う。
「……何でもないよ、考え事をしていただけ」
「そうか」
「ん。……でも、ありがと」
お礼を言えば、彼はお酒を飲みながら、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
くすぐったいような、気持ち。
気づかなければ、どれほど、幸せだったか―……
「……それ、お酒?」
気を取り直すつもりで、そう問えば。
「ん?ああ。こういう日は特別なんだよ」
彼は、ニヤリと笑った。
「特別にって、いつも飲んでんじゃん」
少なくとも、夜会う時はいつも飲んでいる気がするが。
「……お前は飲むなよ」
「えー」
日本酒は好まないが、シャンパンとか、ワインは大好きだ。
飲めるものなら飲みたいのに……
不貞腐れ、唇を突き出した時。
「兄さんも変わったねぇー」
相馬と同じように、酒を飲んでいた水樹がこちらを見て言った。
そんな水樹を見て、慌てる相馬。
「おまっ……酒飲んだのか!?」
「うん!美味しいよ~」
「馬鹿っ!弱いくせに……」
(水樹、弱いんだ……)
初めて知った事実に驚きながらも、水樹の横を見れば。
「兄さんも飲みすぎないようにね」
いつも通りの、冷静な顔が目に入り……こっちも、こっちで驚いた。
注意してくる氷月の前には、空になった瓶が……数えるのも、恐ろしい。
(氷月はザルなのね……)
「お前もな!」
相馬に突っ込まれながらも、平気そうにぐびぐびと水のように飲む氷斗は全く酔う気配がない。