【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「そうだな……あの二人が、喧嘩したときの話をしようか?」
基本的、涼夏が強かったが、勿論、圭介も負けなかった。
「あの二人の喧嘩したときの最高記録、どれぐらいって、父さんは言ってたっけ」
「……一週間」
俺たち双子が、父親の陽介から聞いた話。
それを、子供に受け継がれるのは良いことなのか、悪いことなのか。
それでも、”異端“と呼ばれてなおも、最期まで、人として愛を貫いた圭介に深く愛されたのは、涼夏だ。
「みじかっ!」
お互いを無視する期間。
それの短さに、京子は声をあげる。
「……ひいじいさん、耐えられなかったらしい」
「へぇ……」
流石、愛妻家。
そう、思ったとき。
「陽希!」
別の部屋にいた、妻たちが戻ってきた。
「なんの話をしていたの?陽向」
「他愛もない話。つか、どうする、莉華」
「えっ、なになに。なんかあったの?」
「相馬くんが恋してる」
「マジで!?凄いじゃん!奇跡!」
(……55過ぎたあとも、そのテンションですかい)
自慢じゃないし、心底、嫌だが、俺たちは現在、58歳を突破した。
「難しい顔、してんね。どうした、陽希」
「いや、年取ったなぁ……と。お前はまだ、53だけどよ」
「失礼な。まだ、51よ。それに、お前じゃなくて?」
「魅雨(みう)……」
「ふふっ、よろしい」
……俺達も、大分、妻には溺れさせられている。