【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……知らないからね?」
ほのかに赤くなった顔を上向けて、沙耶は唇を尖らせた。
「どうなっても、本当に……」
「うん」
沙耶が好きな人とは、誰なのだろう。
何でもいい。誰でもいいから。
この気持ちにすべてのかたをつけたい。
報われなくてもいい。
前世のようになっても、彼女が幸せであるならば。
―…生きていてくれるならば。
夕蘭が死んだと聞いたとき、言い知れぬ思いが胸を引きちぎった。
守れなかった。
その事実が、俺を苦しめた。
守りたかった。次こそ。次、こそ。
何度も願い、すべてが終わった日。
主が帰ってくる場所がなくなり、怖くなった。
反対した。それでも。
同じように愛しい人の魂を縛られ続けるのは、耐えられないのだと、かつての王は言った。
気持ちはすごく分かった。
ほとんどの者が愛しい人を運命のせいで喪っていたから。
こうして、生まれ変わっても―……
「相馬」
腕の中で、沙耶が何かを言った。
「……なんだよ。聞こえない」
沙耶は少し背を伸ばして、相馬の耳元で。
「ありがとうね。やっぱり、相馬は優しい」
はにかむ。
“私に命を分けてくれて有難う”と。
「……っ」
愛しい。
『大好きだよ。草志』
かつての姿が重なる。
「わっ……苦しいよ、相馬」
ずっと、この腕の中に。
閉じ込めて、すべてを自分のものにして。
他の男になんか目をやる暇もやらず、愛したい。
「変な、相馬……」
沙耶は一言そう呟いたきり、何も言わなかった。
好きなやつのことを考えているのか、それとも、他のことなのか。
気になったけど、それは相馬が干渉することではない。
お互いに線を引かねば。
(でも、もう少しだけ……)
時が来たら、手離す。
ちゃんと、区切りをつけて。
だから。せめて、今だけは。
俺が自分に自信をもって、過去の自分に勝ち、自分らしく生きられるようになるまでは側にいて欲しい。
―…例え、それが自分勝手な願いだとわかっていても。