【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
『……ねぇ、何しているの?』
第一印象、お人好し。
雪の日に、外に立っていると、手に持たされた傘。
『別にええよ?家、ここやし』
『駄目だよ。なにか用事があって、立ってるんでしょ?傘、あげるから。体な冷えないように……あ、そうだ。これも、あげる』
首に巻かれた、マフラー。
『……あんたが、風邪引く』
されたことのない親切に、思わず、目を見開いてしまい、お礼ではなく、そんなことを言ってしまった。
すると、彼は笑って。
『大丈夫だよ。家、すぐそこだから』
自慢ではないが、京子が立っていたのは、本家の大門である。
玄関ではない。
つまり。
中にある玄関にたどり着くのにも、車必須。
そんな家がある回りには、勿論、特に一般人の家はなく。
彼の言葉も、大嘘だった。
大嘘だって、分かった。
笑顔で嘘をついてまで、私にマフラーを貸す。
そんな彼が、おかしくて。
『ふふっ……』
久しぶりに笑ってしまった。
『あ、笑った。笑顔、似合うね』
そんな私を見て、嬉しそうに笑った彼。
人と関わることが少なかった私は、
彼の笑顔が眩しく見えた。
『僕は、森野悠仁(もりの はるひと)。君は?』
その言葉、動作が意図的だったのかは、分からなかった。
普段なら、こんなことはしないのに。
気づけば、口を開いてた。
『京子や。御園京子』
『京(きょう)ちゃんか、宜しく』
笑顔にほだされた?
そんな、バカな。
人に気を許さなかった、私の心にすんなりと入ってきた男。
これが、悠兄(はるにい)との出逢い。