【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
『京ちゃん、見てみて。これ、あげる』
『……茶菓子?』
彼は、何でもくれた。
本当に、なんでも。
『うん。職場の人にもらったんだけどね、食べられないから……あげる』
『何で、食べられないんよ?』
『僕、甘いものが得意じゃないんだよねぇ……』
ほわわん、とした顔で、何を言う。
『……って、これ、うちの店のやん』
茶菓子の箱の底には、“風月堂”と書いてある。
明らかに、うちの店のものだった。
『え?本当?ごめん、気づかなかった』
『いや、ええんやけど』
悠兄は、申し訳なさそうにシュンとした。
まるで、小動物。
『……うち、プリンも好きやで?』
別に、催促とかではない。
彼は、私を喜ばせるように必死になっているから、面白くて、だ。
『じゃあ、今度はプリンな』
単純なのか、優しすぎるのかは分からなかった。
ただ、惹かれていった。
私が生きる世界では見られない笑顔に、
優しさに、
話し方、
触れ方……
悠兄の様々なものが、私を支配していく。
六歳上のお兄ちゃん。
好きで、側にいてほしくて。
何度もおねだりしたことがあった。
風邪を引いたときとかに、会いに来てもらったり。
親のようだと、思っていたのかもしれない。
それが、恋心に変わったのはいつだったか。
自分にある感情に戸惑った。
『好き』
その言葉が、言えなくて。
けど、ある日……
『……っ、い、今っ!何、した!?』
私は、悠兄の口づけで目を覚ました。