【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……相馬?」
「ん?どうした?」
首にしがみついていた沙耶が、声を発した。
声が震えてない辺り、だいぶ、落ち着いてきたらしい。
「どこに、向かってるの……?」
気丈な女。
どんなときも冷静で、慌てることなどない女。
そんなイメージが強い沙耶が、泣いて、震えて、俺を頼る。
沙耶が怖がっているというのに、それだけで、歓喜に震えてしまう、俺の心。
「雪さんのところだよ」
ビクリ、と、沙耶が身を強張らせる。
そういえば、あの時から、一度も会っていないのだった。
「雪さんに会うの、怖いか?」
そう、訊ねれば。
「……少しだけ」
沙耶の本音を見抜いた、数少ない相手。
覚悟していなかったぶん、沙耶は混乱したけれど。
「今は、どういう人なのか、分かるし」
そう言いながら、沙耶の腕には力がこもる。
「そうか。まぁ、俺がいるから」
「ん。……信頼してる」
何度も、何度も、抱き合って。
キスして、これ以上はないと言えるくらいに、俺達は解け合って。
仮の恋人なのに……何をやってんだと、自分でも思う。
けど、止められないのが、恋というもの。
人を、愛すということ。