【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


流石に、銃弾は効いたか。


包帯でぐるぐる巻きにされた手を、真っ直ぐに伸ばす。


「なんで、こんなに厄介なんだろうな……」


恐らく、俺の見解が間違っていないのなら、夏翠は前世の記憶を見ているだろう。


それを見て、夏翠はどう思うのか。


俺の知っている、沙羅と紅鈴ならば、うまく、夏翠を導いてくれるだろうが……。


沙羅が生きていた時。


俺は、隆舜と名乗り、皇子を務めていた。


紅鈴が生きていた時。


俺は、燎飛と名乗り、皇帝を務めていた。


そして、愛してた。


隆舜は、沙羅を。


燎飛は、紅鈴を。


そばで見ていた中で、多くの人間が二人のために死んだ。


その度に、彼女達は泣かなくなっていった。


涙を呑み込んで、生きようとしていた。


そんな様子を、姿を、ずっと、そばで見ていたんだ。


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