【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
勢いよく、扉の開く音がして。
残念ながら、怪我しているせいで、そちらの方を見れない。
「……っ、夏翠?」
でも、相手が誰なのかは、気配でわかった。
名前を呼ぶと、彼女は駆け寄ってきて。
「……っ、ごめん」
横になる俺の胸に顔を埋め、彼女はそう言った。
「……どうした?」
記憶を見たことは、分かっている。
なら、彼女は“どこ”の“誰の”記憶を見たのだろう。
「勝手なことばかりしてっ、ごめんなさい……っ!」
泣きながら、ただ、謝罪を繰り返す。
「だから、それは何の“ごめんなさい”だ?」
月姫の時は、月姫を守って命を散らし、
沙羅の時は、沙羅自身に置いて逝かれた。
けど、代わりに、紅鈴の時は、最期まで共にいられた。
後悔する人生ではなく、謝られる人生でもなかった。
少なくとも、俺の知っている“彼ら”はそう言っている。