【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「いや……」

「え?」

「死なないで!愛する人を喪うのは、もういや!」


脳裏に、甦る。


“私”を庇って、剣に貫かれた、燕鳳の姿。


「夏翠?」


「死なないで!」


“私”を守って、命を散らした瑛醒。


「死んだらっ……許さないから!」


馬鹿だ。


みんな、馬鹿だ――……。


私なんかを、救うなんて。


どうして、私を――……


「落ち着け、死なないから」


ポンポンと、頭を撫でられる。


「平気だ。このくらいでは、俺は死なない。だから、泣くな。泣いているお前を見る方が堪える」


この人は、いつの時代も、世界でも。


私を一番に、考える。


「……飛鷹は私のこと、好き?」


臥せっていても、笑ってくれる。


私の手を、しっかり握って……離さないと、言うように。


「好き……ではないな。……愛してるよ」


「私が、何になっても……っ?」


嬉しくて、涙が溢れる。


私が私じゃなくなって、飛鷹に嫌われるのが怖かったのに。


それでも、私を愛してくれるんだ。


「例え、どんな姿でも愛すよ」


彼が認めてくれるならば。


後悔なんてない。


「……私も愛してる」


一言、呟くのが精一杯。


「大好き……」


そう呟いて、夏翠は闇に引き込まれていった。


< 275 / 759 >

この作品をシェア

pagetop