【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
昔から、大切なものはなかった。
お母さんに振り向いてほしい。
頭を撫でてほしい。
そんな思いばかりで。
自分が、本当にやりたかったことなんて覚えていない。
でも、今は。
守りたい、女がいる。
愛している、女がいる。
だから。
俺は、頑張れる。
「ん……」
こんなつもりじゃなかった。
前世で愛しても、今世で愛する意味はなかったから。
なのに。
(溺れてしまった……)
愛がどれだけ厄介なものかなんて、理解していたのに。
愛してしまったら、泥沼に沈み込んでいくような感覚に囚われて、逃げられなくなって、危険だとわかっていたのに。
沙耶への想いは、溢れ返る。
見つけてしまった。
手で、触れてしまった。
自分にとって、不可欠な女に。
無視していれば、良かったのに。
沙耶の頬に触れ、髪に触れ、頭を撫でると、
「……んんっ、……へへ……」
彼女は笑う。
くすぐったそうに、身を捩らせて。