【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「……本気で、好きになっちゃった?」



外のことをほったらかしで、俺は沙耶に触れる。


前世からの親友の話より、眠る、最愛の女に触れたいんだ。


すると、横から微笑しながら、柚香が腰を下ろした。


「……ああ。堕ちちまった」


沙耶の幼なじみで、親友第一号の柚香。


彼女は……


「ふふっ、そっか。沙耶が最初、相馬と寝たって言ったとき、沙耶のお兄ちゃんたちに相談しなくてよかった」


腹黒い。


笑っていて、慕いやすく、取っ付きやすい人間で。


明るいから、人が集まるタイプで。


生徒会長ということもあり、クラスの中心にいる彼女に、みんな、最初は訊ねる。


どうして、沙耶みたいな、ハブられている人間と一緒にいるのかと。


それを言われると、柚香は決まった答えを返す。


『沙耶は悪いことをしていないし、ハブる理由もないからよ。何より、私は沙耶に救われたから』


沙耶のためなら、何でもする。


それが、柚香の怖いところ。



「……そこは、全力でお礼を言わせてもらう」



柚香が本当に言っていたら、俺は今ごろ、この世にいなかった。


「じゃあ、どういたしまして」


俺のノリに乗った柚香は、ニッコリと笑みを深めて。


「沙耶を泣かせたら、すぐに、あんたを消してあげるからね?」


国内ほぼトップの家柄の実質的支配者に、この台詞……明らかに、沙耶の友人感がにじみ出ている。


沙耶と柚香が親友でいるのは、こういうところで似ているからだろう。


お人好しで、意地っ張りで、それでいて、大切なものはとことん守り抜く。


それが例え、自分を犠牲しても。

< 280 / 759 >

この作品をシェア

pagetop