【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……誰か、きたな」
部屋の中に、気配を感じた。
辺りを見回せば、沙耶の枕元。
「……夏翠?」
それは、間違いなく、幼馴染みの夏翠の姿。
夏翠は沙耶の頬に触れ、
「すまんの……そなたの大切なものは、妾が護り抜くから……そなたは、生きておくりゃれ」
悲しそうに笑う。
そして。
「……ちと、呼び醒まさせて貰うぞ。草志」
ふわりと、沙耶に手を翳し、そう言った。
「っ、まさか……あの時、沙耶を救ったのは……」
何となく、気づいていた。
でも、認められなかった。
また、俺達の前に現れるなんて思ってなかったから。
こいつは、夏翠じゃない。
夏翠に姿を借りた、月の姫……月姫は頷くこともせず、力を使った。
「五桜の神、十三の星、我が姫の名の元に具現せよ」
夏翠に出来るはずがないのだ。
「……久しぶり、じゃ、だめだよね。初めまして、相馬」
俺と……否、俺の中にいる草志と夕蘭を引き会わせることなんて。
「……夕、蘭……」
「ん。沙耶の中から語りかけていたけど、沙耶は気づかなかったんだよ。しょうがないよね」
俺の中で、何かが蠢いた。
何も言えず、立ち尽くす。
その間にも、月姫は動き、巫女の全てを具現化する。
「……暫し、この者達を借りるぞ。一時的に決着をつけ、黒幕を引きずりだす」
“白桜”を片手に、十三の巫女を従わせて。
中には、桜と紗夜華の前世の姿があった。
わざわざ、病院に寄ってきたのか……。
「相馬、沙耶を守るんだよ」
部屋から出ていくとき、夕蘭が微笑んだ。
「――命に代えても」
今、俺が愛するのは、夕蘭じゃない。
沙耶だから。
護り抜いて見せる。
何があっても。