【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「泊めて!」
いやいやいやいや。ここ、京都なんだが?
「……泊めて貰う為だけに、京都に来たのか?」
よもや、正気の沙汰ではない。
「んー、相談と質問と励ましとお願いにきた!から……泊めて貰う為だけじゃ、ないかな」
「……はぁ」
相変わらず、行動が急である。
「……とりあえず、上がれ」
「はーい!ありがとー」
何の躊躇いもない、彼女。
本当、鈍いって怖いな。
一人で納得しながら、台所に向かう。
「おぉー!広い!」
すると、そんな声が聞こえてきて。
「めっちゃ、景色良いじゃん!夜景とか、綺麗だろうな。ここ、何階だっけ?」
コーヒーを用意していると、そんな質問が。
「……お前、今、一人でエレベーターにのって上がってきたよな?」
頭が本気でおかしくなったか。
「…………15階、だっけ?」
……重症、かも知れない。
「……最上階の24階」
「ありゃ?」
演技でもなんでもなく、本気で間違えたらしい沙耶は、頭を押さえた。
「ごめんねぇ、最近、記憶がごちゃごちゃで」
だからと言って、そんなすぐに忘れるものか。
何かが可笑しい。
それは、分かってた。
でも、確かめられずに。
沙耶の笑顔で、俺は流してしまった。
「いいけどよ……」
二人分のコーヒーを手に沙耶のところへ戻ると、笑顔で迎えられた。
「ありがとー」
もし、この時、少しでも笑顔を濁しておいてくれたら。
俺は気付けたかもしれないのに。