【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
今にも、泣きそうな顔で、沙耶は微笑んで。
「全てを、話す。……約束するから。だから……」
沙耶は立ち上がると、俺に近寄ってきて。
「……側に、いて」
俺の手を、とる。
(そうだ、それでいい)
誰かを頼り、守ってもらうことをこの女は覚えなければならない。
「いるよ。ずっと、お前が望む限り……な」
手を伸ばす。
俺らの想いは、すれ違う。
お前をただ、一心に愛すことができたのなら。
手を伸ばしてきた沙耶を腕に閉じ込めて、俺は目を閉じる。
(――全てを捨ててしまいたい)
沙耶への想いを、伝えることへの妨げになってしまうものなど。
お互いが、すべての世界で。
薫と桜は生きていた。
なら、俺達は。
何を望み、どんな未来が待ち受けるのか。
「……怖いの」
ボソリ、と、俺の腕のなかで沙耶が呟く。
震える手は、俺の胸元に添えられて。
「…………死ぬのが、怖い」
不安を、吐露していく。
「こんなこと、考えたことなんてなかった……いつだって、私は朝陽に、アイラに、お兄ちゃんたちに謝ることしか考えてなかったの」
自分の命で、償えるのなら。
それなら、喜んで差し出す。
それが、沙耶の考えだった。
「でも……」
俺の世界が狂った、あの日。
沙耶に出会った、あの春の日。
「変わって、しまった」
運命は、廻っている。
俺達の知らないところで。
巡り会うはずのない人間たちが廻り合い、愛し合う。