【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「私は、多くの人間の生を狂わせた。なのに……私が、私だけが、幸せを感じて良いはずがないじゃない……」


沙耶が幼い頃に描いていた、届かない幸せ。


全てを諦めてなおも、償えない罪の重さに、沙耶は押し潰されていく。


あげられた沙耶の瞳には、大きな不安。


「なのに」


沙耶は、涙を一筋流した。


その涙は、美しかった。


「幸せを、私は感じてる」


最低行為だと、気づいていながら。


彼女は、責め立てていた。


幸せを感じている、自分自身を。


「私、どうすれば良いかなぁ……?」


死ぬ未来。


その刻限が近づくなかで、沙耶は罪の償う方法を探す。


自分の、幸せではなくて。


「沙耶、」


下がっていく、視線を引き留める。


「お前の人生だ。お前の好きにして良い。俺が、手伝ってやっても良い。ただ、な?」


忘れてほしくない。


沙耶の生を望んでいる人間は、たくさんいることを。


「雪さんが言ったように、お前は諦めることになれている。”諦めること“を、諦めること……それを、お前は知らないんだ」


手を重ね合わせれば、その手は暖かく。


こんな風に、俺達の未来も重ねあわすことができたら。


「……生きるんだよ、沙耶」


終わりなき因果

お前とならば、変えてゆけると思った。


「生きてくれ……頼むから」


閉ざされた真実も、その手で解き明かしていく。

< 296 / 759 >

この作品をシェア

pagetop