【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「私は、多くの人間の生を狂わせた。なのに……私が、私だけが、幸せを感じて良いはずがないじゃない……」
沙耶が幼い頃に描いていた、届かない幸せ。
全てを諦めてなおも、償えない罪の重さに、沙耶は押し潰されていく。
あげられた沙耶の瞳には、大きな不安。
「なのに」
沙耶は、涙を一筋流した。
その涙は、美しかった。
「幸せを、私は感じてる」
最低行為だと、気づいていながら。
彼女は、責め立てていた。
幸せを感じている、自分自身を。
「私、どうすれば良いかなぁ……?」
死ぬ未来。
その刻限が近づくなかで、沙耶は罪の償う方法を探す。
自分の、幸せではなくて。
「沙耶、」
下がっていく、視線を引き留める。
「お前の人生だ。お前の好きにして良い。俺が、手伝ってやっても良い。ただ、な?」
忘れてほしくない。
沙耶の生を望んでいる人間は、たくさんいることを。
「雪さんが言ったように、お前は諦めることになれている。”諦めること“を、諦めること……それを、お前は知らないんだ」
手を重ね合わせれば、その手は暖かく。
こんな風に、俺達の未来も重ねあわすことができたら。
「……生きるんだよ、沙耶」
終わりなき因果
お前とならば、変えてゆけると思った。
「生きてくれ……頼むから」
閉ざされた真実も、その手で解き明かしていく。