【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……はぁ」


「…………ずっと、ため息をつかれると、さすがの俺でも傷つくんだけど?」


さっきからやっているのは、段ボールの解体作業。


「いや、千歳のことじゃなくてね……」


そう、引っ越しは別にいい。


恋人と暮らせるなんて、最高だから。


けど、私が心に引っ掛かるのは……


『ねぇ、柚香、少しお金を……』


……母親のこと。


「じゃあ、何でため息をついてんの?」


「んーと、」


言っても、良いのだろうか。


「言ってよ。柚香が何で悩んでいるのか、知りたい」


荷物を放ってまで、私に気をかける人。


「……お母さんのこと」


「ああ。そういや、その問題もあったな……」


巫女のこと、恋愛のこと、進路のこと、家庭のこと……いろいろと考えることが多すぎて、頭がいたい。


千歳も同じらしく、苦笑しながら、私の頭をなで回した。


「……柚香はどうしたい?」


「え?」


「お母さんを相手に、どうしたい?」


私を捨てた女に、お金をやる気なんてない。


こちとら、あのくそ父親にお金を返すことで必死なのに。



「……甘やかさない。お金も、あげない」


「それが、柚香の意思?」


「うん」


もうこれ以上、両親に人生を振り回されるなんて嫌。


「……お父さんにも、自分の養育費をすべて返すっていっていたよね?」


「……よく知っているわね」


「沙耶がいっていたからね」


……さいですか。


お金がほしいけど、お金は作れない。


働かなければならないけど、働く時間がない。


「……で、提案なんだけど」


「ん?」


そんな私にできた“お金持ち”の恋人は、ニッコリと微笑んだ。


「俺に借金しないか?代わりに、父親には全額払ってやる」

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