【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
すでに、消えたはずというのに。
散ったのは、俺らの幻か?
……まさか、そんなはずはない。
よく見れば、夏翠の寝巻きに身を包んでいて。
それでいて、容姿は現実離れ。
白銀の髪に、月の光のような金色の瞳。
「……“白桜”、逢いたかったぞ」
焔棠の大切なものが仕舞われる倉がある神宮寺家に封印していたはずの、焔棠家初代、双璃桜が持ってきた、“姫”が、沙羅が、紅鈴が、使っていた剣。
それを、意図も簡単に、どこからともなく出す、この女はもう、夏翠ではない。
「“月姫”、お前、なんで――……」
俺は、息を呑んだ。
静かになる、暮れの頃。
いろいろと疲れが溜まり、昼寝をしていた夏翠の体で目覚めた、月姫。
「始まるであろう?そろそろ……最期の戦いが」
特別な人間にしか、抜けなかった剣。
それを抜いて。
「……これ以上、死人を出すわけにはいかんからの」
光が当たり、反射するそれは、月姫の神々しさを醸し出す。
「全ては、妾の誤った選択のせい……ほんに、すまんかった」
綺麗な所作で、頭を下げた月姫。