【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……だから、私は……」
人を恨むこと。
即ち、自分の心を覆い隠すこと。
私は手の色が失われるくらいに、手に力をいれた。
「……」
恨みたくない、恨みたくない、そう思い続けて、壊れて、世界のすべてを捨ててしまおうとしたお母さんを救ったお父さん。
夜、たまたま拾った娘に金をかけ、仕事を放ってまで、私の側にいてくれたお父さんは本当に信じて良い存在だったのか。
「お母さんは、わからなかったと言ったの。でも、何があっても側にいてくれたのが、お父さんだけだった、危険なことをしてしまったときに本気で怒ってくれたのは、お父さんだけだったんだって」
世界は恨んで良いといってくれたのが、お父さんだった。
自分を壊すことで、人を恨まないようにしていった結果、お母さんは心が病んでしまった。
一時期、何も飲まず食わずで一日中、ボーッとしていた時間もあったという。
その時間があったからこそ、今、両親は笑い合えている。
お母さんをそこまで追い込んだのが、あの人。
そんなあの人に、再び、幸せを崩させる訳にはいかなくて。
あの人にどんな事情があろうが、私は非道になろうと決めた。
残り短い、この命で遺せるもの。
それが、家族の幸せだと信じてる。
ううん、信じてた。