【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「嗚呼、私、死んじゃうんだって、実感しちゃうの……死んでもいいって思っていたのに、なんでっ?」
生きたい。
生きて、子供達をこの腕に抱きたい。
泣いたことがなかった。
朝陽を失ってから、両親の前では泣かないようにしてきた。
でも、このときだけはダメで。
「……よお、頑張っとるよ。君は。いっぱい、泣き?甘えてええんやから……」
泣きじゃくる私を、お父さんは腕に包んだ。
久しぶりの抱擁だった。
暖かくて、安心できて。
「うっ、うぅ……ぇえ……うぅぇ……」
泣くことしか、出来なかった。
好きな人と触れあうこと、それは幸せなことだった。
その代償が命だとわかっていても、辛くなかった。
命を失う覚悟は、とうに、出来ていたはずだった。
「お、とぅ……さっ……」
「ん。大丈夫や。大丈夫やで。沙耶」
頭を撫でてくれる手。
優しくて、優しくて、心地よくて。
お母さんの居場所を奪っている私は、最低な娘だ。
けれど、この時は縋らずにいられなかった。
(……生きたい)
私の願いは、それだけ。
でも、中絶はできない、しない。