【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「姉さん、それ、いつの出来事?」
「……10月の始めや……」
泣きながら、姉さんが呟き、姉さんの体を、悠仁が支えた。
現在は、10月も終わり、11月がやって来た。
つまりは、一ヶ月前?
「俺は……」
一ヶ月前、何をしていた?
沙耶に頼まれたことを調べ、携帯の残っていた着信を見て、かけ直さなければならないと思いながら……時間、なくて。そして……
「……相馬さま」
過去に遡っていると、甲斐が部屋に入ってきた。
そして、話の顛末を聞き、淡白に告げる。
「一ヶ月前は、お見合いをなさっていました。お断りになられるもので……私は、その時に沙耶に会いましたよ」
「なんだと、?なんで、言わなかった!?」
掴みかかるように言うと、甲斐は言った。
「伝えようとしましたが、彼女が泣いて懇願したんです。絶対に、相馬には言わないで、と。代わりに……」
告げられた言葉は、信じたくなかった。
「……あいつを失うことを認め、他の女を愛せ?……馬鹿、言うな。あいつがそんなことを言ったと言うのか?俺にとって、沙耶は唯一無二の存在……誰にも、代わりは効かねぇんだよ。絶対に、見つけ出して……」
「……それは、私も気になったので、沙耶の現在いる場所を調べようとしました」
「…………言わないでくれって、なんでだ?」
甲斐の言葉は無視して、俺は問いた。
俺は、何かをしただろうか。
沙耶から、遠ざけられるようなことを。
考えてみても、多忙だったからか思い出せない。
記憶力には自信があるのだが、こういうときに役に立たないなんて―……
ポンッと、肩に手を置かれた。
「……調べようとしたって、つまりは、出てこんやったってことやろ?」
目が赤い。……また、寝ていないのか。