【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「姉さん、それ、いつの出来事?」


「……10月の始めや……」


泣きながら、姉さんが呟き、姉さんの体を、悠仁が支えた。


現在は、10月も終わり、11月がやって来た。


つまりは、一ヶ月前?


「俺は……」


一ヶ月前、何をしていた?


沙耶に頼まれたことを調べ、携帯の残っていた着信を見て、かけ直さなければならないと思いながら……時間、なくて。そして……


「……相馬さま」


過去に遡っていると、甲斐が部屋に入ってきた。


そして、話の顛末を聞き、淡白に告げる。


「一ヶ月前は、お見合いをなさっていました。お断りになられるもので……私は、その時に沙耶に会いましたよ」


「なんだと、?なんで、言わなかった!?」


掴みかかるように言うと、甲斐は言った。



「伝えようとしましたが、彼女が泣いて懇願したんです。絶対に、相馬には言わないで、と。代わりに……」


告げられた言葉は、信じたくなかった。


「……あいつを失うことを認め、他の女を愛せ?……馬鹿、言うな。あいつがそんなことを言ったと言うのか?俺にとって、沙耶は唯一無二の存在……誰にも、代わりは効かねぇんだよ。絶対に、見つけ出して……」


「……それは、私も気になったので、沙耶の現在いる場所を調べようとしました」


「…………言わないでくれって、なんでだ?」



甲斐の言葉は無視して、俺は問いた。


俺は、何かをしただろうか。


沙耶から、遠ざけられるようなことを。


考えてみても、多忙だったからか思い出せない。


記憶力には自信があるのだが、こういうときに役に立たないなんて―……


ポンッと、肩に手を置かれた。


「……調べようとしたって、つまりは、出てこんやったってことやろ?」


目が赤い。……また、寝ていないのか。

< 355 / 759 >

この作品をシェア

pagetop