【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


沙耶は、相馬のために姿を消した。


紗夜華以外が泣いているところを、初めて見た甲斐は、正直、戸惑っていたんだ。


相馬を初対面で殴った、甲斐の人生に置いて、見た目と中身がそぐわない女は、沙耶が初めてだった。


紗夜華は見た目と同じで、儚く、それでいて、強い女だったから。


「……」


沙耶を捕らえようとした手が、静かに落ちる。
捕らえることができなかった。


捕らえるということは、沙耶の人生をかけることと同等を意味するから。


相馬の妻ということは、永遠に側にいるということは、それだけ“重い″。


だから、沙耶が別れを選んだ今、相馬の側近といえど、幼馴染みといえど、口を出すことではない。


それが、例え、彼女の本心ではなく、“何か″が、彼女を突き動かしているのだとしても。

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