【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
全ての始まりと終わりは、愛によって。
■相馬side□
当主が動き出した。
その報は、俺たちの間を風のように駆け抜けた。
「よっ!」
連絡を受け、現れたのは瀧と弓。
「春ぶりだなー、相馬」
明るい瀧は、相変わらず、深刻という言葉を知らない。
かつて、似たような状況が起こったとき。
『うじうじ下向いてても、時間は前にしか進まねぇ。なら、上を見上げて、やりたいことをやった方がいいだろ』
と、彼は隆舜たちに言っていた。
「……話は聞いてるよ。不器用だなー、お前も」
俺たちのことをすべてと言っても良いくらいに知っている彼は、困ったように笑う。
「不器用で、お人好しで、少しは我が儘になってみろよ。主とか、んなもん、無視してよ。俺の親父を選んだのが、俺の母親。で、俺の母親がお前たちの守るべき主、だろ?なら、ちょっと、サボってもバレやしねぇよ。俺の性格は、親父のまんまなら、そんな男を選んだ母さんは気にしねぇだろ。うん」
一人で勝手にペラペラ喋り、
「あ、ちげぇ。“瀧”には、別の母さんがいるじゃねぇか。たまに、やるんだよな……記憶あると、こういうところが厄介だ……」
頭を抱えた。
彼の前世である、瑛醒と紅覇はもとをたどれば、どちらも、母親は月姫だ。
だから、間違えることはなかった。
……間違えようがなかった。
だが、世界も時代も、すべてが違うこの異世界では、そうはいかない。
この世界の過去にも未来にも存在しない世界。
その時から続く、央耀の愛憎。
月姫に対する、執着。
気を抜けないのは、確かだった。
当主が動き出した。
その報は、俺たちの間を風のように駆け抜けた。
「よっ!」
連絡を受け、現れたのは瀧と弓。
「春ぶりだなー、相馬」
明るい瀧は、相変わらず、深刻という言葉を知らない。
かつて、似たような状況が起こったとき。
『うじうじ下向いてても、時間は前にしか進まねぇ。なら、上を見上げて、やりたいことをやった方がいいだろ』
と、彼は隆舜たちに言っていた。
「……話は聞いてるよ。不器用だなー、お前も」
俺たちのことをすべてと言っても良いくらいに知っている彼は、困ったように笑う。
「不器用で、お人好しで、少しは我が儘になってみろよ。主とか、んなもん、無視してよ。俺の親父を選んだのが、俺の母親。で、俺の母親がお前たちの守るべき主、だろ?なら、ちょっと、サボってもバレやしねぇよ。俺の性格は、親父のまんまなら、そんな男を選んだ母さんは気にしねぇだろ。うん」
一人で勝手にペラペラ喋り、
「あ、ちげぇ。“瀧”には、別の母さんがいるじゃねぇか。たまに、やるんだよな……記憶あると、こういうところが厄介だ……」
頭を抱えた。
彼の前世である、瑛醒と紅覇はもとをたどれば、どちらも、母親は月姫だ。
だから、間違えることはなかった。
……間違えようがなかった。
だが、世界も時代も、すべてが違うこの異世界では、そうはいかない。
この世界の過去にも未来にも存在しない世界。
その時から続く、央耀の愛憎。
月姫に対する、執着。
気を抜けないのは、確かだった。