【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「先生、子供って可愛いですよね……」
遠い目をする彼女は、分かっている。
自分は子供を抱けないのだと。
「良い子に、育ってね」
優しく、優しく、お腹を撫でる。
いつか、伝えてあげよう。
彼女の思いを知る、唯一のものとして。
これから先の未来がどうなろうとも。
伝えてあげよう。
子供たちに。
母親は、美しく強いのだと。
捨てられた子供が溢れ返るこの世の中で、沙耶は子供のために命を使う。
母親としてできる、最期の仕事。
「どうか、この子ら諸とも、相馬をよろしくお願いいたいします」
頭を下げないでくれ、と思った。
子供を救えても、
相馬を救えても、
僕は君を救えない。
医者なのに、救えないんだ。
「ああ」
自分の娘のような、そんな存在。
そんな沙耶の手は、驚くほどに冷たかった。