【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「姫」
その場で薫が、膝まずく。
「……愛しいものは、また、妾の犠牲になろうとしておるのじゃろ?何故、妾なんかに傅くのじゃ?」
薫は下げていた頭を上げ、笑う。
「貴女にお仕えできないことほど、惨めなものはありませぬ。此所にいるもの全員が貴女に忠誠を捧げます。どうぞ、御命令を」
極道の若頭、焔棠の会社と数々の仕事をその若さでこなす姿は、よもや説明できなかった。
けれど、目の前にいる女人こそが、私たちが前世で仕えた相手だと言うのなら、何とも彼らがこんな風でも責められない。
「……今の戦況は?」
月姫は自分に膝まずいた皆を見て、一言、尋ねる。
「二十年前、極道の不祥事と共に起こった事件では沢山の犠牲が出ましたが、我等がまだ、幼かったのが裏目に出て、そこにいる雪様が代わりに」
落ち着いた声音の相模…もとい、前世名でいう
声羅は長い髪を背中に流し、妻の澪と共に傅く。
「雪か……ご苦労、世話になったな」
「ふん、千夏の仇を討ったまで。あいつらは、地獄を見せて、人生に絶望されながら、この手で捻り潰したよ」
「ほお、絶望か。それはどのようなものじゃ?」
「くくっ、聞きたいのか?教えてやろうか?まずなぁ、死ぬ直前まで殴るんだ。そして、爪を剥いで、髪を切って…少しずつ指を切り落としたあと……「黙れ、ジジイ」ちっ、折角話そうと思ったのに。ここからが面白いんだぞ?奴等は、みっともなくな涎を垂らしてな……ぶちこんだら、骨は簡単に逝って……「黙れっつってんだろ。わかんねーのか。年取ったことで耳まで逝ったか、くそじじい」…………本当にお前は誰に似たんだ?雅の息子のくせして……地味に京に似てるぞ?話しちゃダメなのか?寂しいなぁ……残念だなぁ……」
薫から止められ、雪は口をつぐむ。