【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……ぁ……」
何を言っているのか、さっぱりだった。
だから、直樹先生を呼んだ。
すると、先生は愕然として。
「桜ちゃん、目覚めたのかい!?」
飛び込んできた直樹さんに桜はただ微笑んで、頷き……
「か、ぉるは……?」
掠れた声で、そう尋ねた。
「当主との一騎討ちで……先程、すべてが終わったらしい」
直樹さんは辛そうな顔で、目を伏せた。
「美桜が、秀征を討ったって……」
(ああ、なるほど……)
彼らはやりとげたんだ。
誓ってきた、復讐を。
そして、そのお陰で、眠り姫の桜は目が覚めた。
魔王の呪いで深い眠りについてしまったお姫様を、ちゃんと、十三人は救ったんだ。
これで、皆が幸せになる。
澪は相模と、甲斐は紗夜華と、千歳は柚香と、薫は桜と、光輝は朱里と、蒼生は真姫と、その他だって……皆が安心して、幸せになれる。
(良かった……)
これで、沙耶が絶対に見届けなければならないと思っていたことが終わった。
沙耶が入り口のところで安堵の息をつくと、お水を口にして、だいぶ、喉が潤わされた桜が私を視界に入れた。
「貴女は……?」
桜のその問いに直樹さんが一瞬、答えようとしたけれど。
私はそれを遮った。
「私は、柏原奈櫻。隣の者よ。あと、10日、よろしくね?」
彼女に、何かを遺してはいけない。
私は最後まで、ただの隣の人間でいるんだ。
でなければ、私は壊れてしまうから。
置いていきたくないの。
子供も、相馬も。
好きだから、
愛しているから、
幸せになってほしいから。
居場所をバレるわけにはいかない。
お姫様には、教えない。
……私は、そのつもりだった。
でも、誰よりも欺けない子……それが、桜だったんだ。