【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


≪桜≫


私の名前を呼んでくれる、人。


≪美桜は?≫


続いて、愛する人の名前を呼ぶ人。


「……直樹さん、私のお父さんって何歳で死んだの?」


色々なことがあって、聞けなかったこと。


私は今、ようやく、それを聞けるんだ。


直樹さんは若干、驚いたような顔をして、すぐに、柔らかく微笑んだ。


「26歳。若かったけど……爆破事故で」


「26……じゃあ、お母さんはその時?」


「16。教師と生徒の恋だったからね。まぁ、みんな、反対はしなかったけれど」


「……お母さんは、私を16で生んだんだよね?」


「うん、桜の顔をみる前に、京は死んじゃったからね」


私が同じように薫を失ったら……しかも殺したのが、自分の実の父親だったら……考えるだけで、吐き気がしそう。


お母さんは、復讐を終えたんだ。


泣きながらでも、大切なものをすべて捨てても。


「……直樹さん、お母さんって薫といるよね?」


「美桜?うん、多分……」


「呼んでもらえないかな?私、お母さんに逢いたい。逢って、“お母さん”生んでくれてありがとうって言いたい。頼んでも良い?」


「っ、勿論……」


「ありがとう」


私はやっと、甘えられる。


やっと、静かに眠ることが出来る。


お父さんを殺し、おじさん、おばさん、お祖母ちゃんを殺して、お母さんや薫、雪お祖父ちゃんに死ぬほど辛い思いをさせた、お祖父ちゃんは許せない。


けれど、悪い人ではなかった。


記憶をみる限り、悪い人ではなくて……あの人も、愛する人を失って、傷ついていた。


そこにつけ込まれたんだ。


央耀に。

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